○ 読後所感

    著者別に寸評 
(面白くないと感じた書籍は含まれません。)

    時間を見つけて少しずつ書いていきます。(寸評だからあまり参考にならないか。)

著者:  司馬遼太郎

書名

寸評
坂の上の雲 一番好きな作品です。何度も読み返しました。この時代の日本人の息吹を感じ取れます。山本権兵衛が築き上げた帝国海軍が、その真価を問われた一戦で奇跡的な戦果をあげた日本海海戦をクライマックスとする物語。
項羽と劉邦 司馬作品にのめり込むきっかけとなりました。中国が中央集権国家である秦から次の時代に移ろうとしていた激動期の記述、特に人間の描写が素晴らしい。大陸が舞台なのでスケール感がある。
翔ぶが如く 西郷隆盛と近代日本の土台を構築した大久保利通を中心とした物語。大久保公はもっと評価が高くても良いのではないかと個人的には思うのだが。本当の意味の革命家と政治家の違いか。
河井継之助にどっぷりとつかりました。しかし未だに地元では評価が分かれるというのは致し方ないことですね。
竜馬がゆく 文句なしの大ベストセラーらしいです。私も好きです。薩摩や長州にとっては実際の所、有用な浪人程度という認識が実情であろうが、どっこい本人は船中八策に見られるように彼らを凌駕する器だったのかも知れませんね。
関ヶ原 へいくわいもの石田三成と30万石の陪臣直江兼続の話かな。光成の数少ない友人武将である大谷刑部が結構好きです。又島左近に舞兵庫といった光成の家臣も生き生きと活躍します。どうしても堺屋太一の「巨いなる企て」と読み比べてしまいます。
尻啖え孫市 雑賀鉄砲衆を率いた雑賀孫市、信長の野望でこの武将で天下を取りました。Hi.。信長をやりこめる所など痛快でした。これも映画化されており面白かったという記憶が。
国盗り物語 斉藤道三と織田信長の話であるが、ひとこと面白かった。ところで帰蝶さんは途中で歴史から忽然と消えるのですが。
殉死 乃木希典の話ですが、奥さんも道連れでかわいそう。どうしても映画二百三高地とダブってしまいます。
児玉源太郎に本音をぶつけるところや、明治天皇に上奏するときに自分の無策により多くの兵を死なせた事を独白し泣き崩れるところ等人間臭さが印象深い。決して有能な指揮官で無かった事は確かか。
新史太閤記 司馬遼太郎が描く太閤記。太閤記なのですが、あまりにも脚色が強くないのが司馬流か。
義経 NHK大河ドラマの原点みたいなものですね。読んだのがあまりにも古くて良く覚えていませんので寸評は無し。
世に棲む日日 高杉晋作は「もしこの人がもう少し長命であれば」の典型ですが、もう一人松下村塾の英才であった久坂玄瑞も惜しまれる。
晋作の辞世の句が好きです。「おもしろき こともなき世を おもしろく」下句は無くていいのです。
花神 大村益次郎を描いた数少ない小説。でも印象に残ったのはおいねさんでした。
幕末 「桜田門外の変」「奇妙なり八郎」「花町屋の襲撃」「土佐の夜雨」「逃げの小五郎」「死んでも死なぬ」「浪華城焼討」
酔って候 「酔って候」「きつね馬」「伊達の黒船」「肥前の妖怪」山内容堂、島津久光、伊達宗城、鍋島閑叟
豊臣家の人々 中でも秀次と言う人は本当のところ諸大名とのやりとり、関白となるまでの事蹟など女癖の悪さを除けばそこそこの人物だったのでは無かろうかと類推いたします。
王城の護衛者 「加茂の水」「王城の護衛者」「英雄児」「鬼謀の人」 松平容保の実直さが好きです。さぞかし無念であったろう。
晩年も肌身離さず持っていたと言われる孝明天皇から下賜されたご宸翰と御製。
孝明天皇からはかほどの信頼を受けていたのだが。
会津藩の正義と忠誠を永遠に伝えるものである。容保の死後に贈られた忠誠霊神という神号はまさに彼の生き様そのものであろう。
功名が辻 山内一豊と妻千代の出世物語?NHK大河ドラマではNHKらしい脚本でしたね。
梟の城 映画化やドラマ化されている人気作品ですが、やはり原作を読んだ上での比較が面白い。

 

著者:  津本 陽

下天は夢か 日本経済新聞に連載されていたと思いますが、その当時から読んでました。ハードカバー、そして文庫本でも買ってしまいました。
これも何度も読んだ作品です。「そうだぎゃー」と言う方言をうまく取り入れた作品という評価ですが、納得です。
武田信玄 しょっぱなの1ページを読むだけで、「この人は文章がうまいなぁ」と素人の私に感じさせます。作家です。プロです。あたりまえか。
一気に読み終えました。満腹です。信玄その後の勝頼の話まで続きます。天目山まで。
   
椿と花水木 ジョン万次郎という、運命に翻弄されながらも受け入れ最大限の努力で乗り切る勇気と知恵の男の話である。
龍馬残影 海援隊の立場から書かれた本が多いが、紀州藩やいろは丸の船主の大洲藩の立場から書かれたもので、紀州藩、大洲藩から見れば、かれらは、金を奪う詐欺師の様な集団であるのだが、激動の時代にあっては、保守的な組織と言うものは硬直しており、いいように利用され食いつぶされていく悲しい存在だったのかもしれません。竜馬の一面でもあります。
   

 

著者:  堺屋 太一

鬼と人と 信長と光秀を同時進行で各々の心の内を対比する中々面白い形式の小説であった。
お互い相容れない心の内面を描写することによりその相克が際だちます。
巨いなる企て 関ヶ原の合戦を光成の壮大なプロジェクトと見立てた小説です。司馬さんの関ヶ原と併せて読むと面白い。

 

著者:  新田 次郎    

武田信玄 風林火山の4巻からなる、信玄像のルーツの様な作品です。私は学生時代4年間甲府で過ごし、下宿も武田神社のすぐ下でしたので思い入れが多分に有ります。甲府駅には信玄の像がどっしりと構えています。
武田勝頼 勝頼は決して凡庸な武将では無かった筈ですが、武田家という大組織の、代替わりによる重臣の転換がうまく果たせなかった為の悲劇なの知れません。誰もが認める2代目では無かった勝頼の労苦と、膠着した組織の末路が描かれています。
新田義貞 関東地域には多くの義貞にまつわる、特に鎌倉攻めの件に関する遺跡が多くあります。地元群馬出身の人物だけに思い入れが有ります。尚、栗生山栗生神社の祭神は義貞の4天王の一人栗生氏との事でした。
しかし、出来ることならば勾当内侍を見てみたいものです。
聖職の碑 先に映画化された方を見た。鶴田浩二の校長がよかった。自らのシャツを子供に与えて救おうとする。そして自身も落命する。
遭難の一番の原因は心ない登山者の失火による山小屋の消失であろう。とんでもない連中である。
孤高の人 著者自身も富士山で加藤文太郎本人に会ったことがあるそうだ。
北鎌尾根に降りてからの極限状態に至るまでの描写は生々しく、そして辛く悲しい。
加藤文太郎著の単独行を併せて読んでしまう。
本書は孤高を強調するためか吉田氏の描写は少し不自然な感じは否めないが名著であることには変わりはない。。

 

著者:  井沢 元彦

恨の法廷 秀逸です。この本を読んでフムフムとうなずきながら、かつほほえみながら一気に読み終えました。
決してかの民族が嫌いな訳では有りません(かといって好きでもありませんが)が、個人個人ではごく普通の人々なのに、集団になるとヒステリー状態に陥るがごとく論理一切なしの感情のみに流される。永遠にわかり合えることは無いでしょう。福沢諭吉の脱亜入欧論は民族性を看破した至言かもしれません。
覇者 武田信玄は野望半ばで潰え、織田信長が覇者となる。戦国の信長、秀吉、家康セットではなく、信玄と信長の2人の天才の天下を望んだ激突と捉えた作品です。井沢さん歴史小説も面白い。
逆説の日本史 この人のライフワークですかね。基本的にこの作家の歴史観は合点がいきます。確かに歴史学者は歴史上の確たる証拠、資料が無ければ従来の説を変更することはかなわないかもしれないが、井沢氏の様にその時代に生きた人々、環境に自分を置き換えた視点で見ると、新しい本来の事実が見えてくるように思います。
歴史if物語

 

著者:  横山 秀夫

半落ち 映画化されました。映画では樹木希林の演技が秀逸でしたが、心の微妙な動きを演技だけではかなり難しい?
残念なのは原作にある刑務官古賀誠司の章がほとんど割愛されたことです。
「一つぐらいは自慢話を持っていたい。」・・愚直に生きた老刑務官のこの章が好きだったのですが。
この作品は人生経験に比例してのめり込む比率が高い作品だと思いました。
出口の無い海 人間魚雷回天。海の特攻である。一度死を決意した人間が、機器の障害の為に舞い戻る。その生気の失せた顔ととっさにとった行動が極限状態を良く表しています。悲しい話です。
影踏み 私は最初に横山さんは警察官出身かと思っていました。
それほど警察小説が多く、かつ組織の内部など詳細に記述されておりますものですから。
真相
臨場 検死官にスポットが当たりました。TVドラマ化されたがこれも結構面白かった。
深追い
動機
陰の季節 警察組織の人間模様と云ったところか。
クライマーズ・ハイ 日航機事故時の群馬地元新聞社を舞台にしたものです。
この作品も映画化され見に行きました。そしてついには事故当時遺体確認の総指揮を執った飯塚訓氏が退職後に書かれた「墜落遺体」を手にするに至りました。
しかしあのような現場に直面しても記者と言うのは冷静に、かつ正確に事物を伝えるのみならず、磨かれた感性がかいま見られる文章を書くものだと、つくづく感心しました。(例:若い自衛官の場面)

 

著者:  貴志 祐介

新世界より 3年待った甲斐あり。
この作家の前作が普通の推理小説だったので少し物足りなかったが、本作で十分期待に応えてくれました。
黒い家 最初に読んだ貴志作品。この種類の恐怖感は初めてでした。
後に映画化されましたが、がっかりしただけでした。止めときゃ良かったと思いますがやはり見てしまう。
十三番目の人格 isolaが恐ろしい。怨霊がすぐ目の前を・・・・、なぜか身の毛がよだちます。
青の炎 悲しい結末です。あまりにも少年のひたすらな家族への愛、抜き差しならぬ状況に追いやられる運命の皮肉。
天使の囀り よくまあこんな発想ができるものだなと感じます。この作家の場合、ジャンルと言うか、狭い意味での自分の小説の範疇というものが無い、有るのは新しい発想とそれを題材にした小説なのであって、それを平然と作品に仕上げてやってのけるのが貴志祐介という作家なのです。なんのこっちゃ。
クリムゾンの迷宮 自分も同じ境遇でさまよってしまいます。怖い怖い・・人間が変わる。
硝子のハンマー 普通の推理小説。
あまり貴志祐介らしく無いな・・と感じた作品です。私だけでなく「はと13」も同じ様なことを言ってました。
狐火の家 発売と同時に買ったは良いが最近山歩きばかりしていて読む暇がない。
悪の教典 アマゾンで購入。久しぶりの作品への期待感もあり読み始めるとぶっ通しで読んでしまった。独特の不気味さが復活か。
一部バトルロワイアルの世界かと・・・。沈黙を守る美彌が悲しく哀れである。

 

著者:  東野 圭吾

夜明けの街で 浮気は身の破滅ですぞ。(笑) 読後感があっさりしています。内容もあっさりしています。
白夜行 悲しい物語です。こうやって生きていく事しか出来なかった。これは推理小説というジャンルは越えています。重い。
幻夜 一説によると百夜行の続編と言われて居ます。そうともとれるし、そうででないかも知れないし。一気に読んでしまいました。
天空の蜂 扱う題材が大きすぎたか。著者が工学部出身であることを再認識。
容疑者Xの献身 ある愛の形。映画化されるとかされないとか。この作品結構好きです。
さまよう刃 自分の身に置き換えると、やはり同じ事をするでしょう。そうで無ければ正気を保てないかも知れない。人の心を持たない人間は年齢を問わず糾弾されるべきだと思います。
秘密

 

著者:  乙一

石ノ目
暗黒童話
暗いところで待ち合わせ 作風が変わったかと思わせる内容です。はらはらどきどきしてしまいますね。
死にぞこないの青
ZOO 新しい才能ですね。参りました。この本を切っ掛けにこの著者の作品を読むようになりました。

 

著者:  鈴木 光司

リング 小説も怖かったが、映画化された複数作品も又良かった。仲間由紀恵の貞子は秀逸である。
らせん
ループ 発想が面白い。自分もIT業界に居るので電子計算機(古いね。)の格段に進歩した、全ての事象がそれら巨大システムの映し出す虚像の世界。一部マトリックスの世界観に通じるものがある?
バースデー 一連の物語の序曲なのであろうか。

著者:  遠藤 周作

決戦の時 こりあん先生が書いた信長。文句無く遠藤流の信長記。
この作品は近年明らかになった第1級文書であろうと思える前野家文書「武功夜話」の引用が多いので視点が新しいともいえる。
男の一生 「武功夜話」といえばそのものずばりが前野将右衛門の一生を描いたこの作品。前野党にスポットが当たりました。

著者:  城山 三郎

著者:  山岡 荘八

著者:  歌野 晶午

著者:  我孫子 武丸

著者:  宮部 みゆき

著者:  京極 夏彦

 

 

 

その他著者

書名 著者 寸評
警官の血 佐々木讓 親子3代のまさに警官の血です。
父親代わりの血のつながらない叔父達。泣けます。
奥日本紀行 イザベラバード 明治初期の飾り気のないアイヌの実像が印象的。
この当時の外国人による貴重な見聞録ですね。
首挽村の殺人 大村友貴美 横溝正史ミステリ大賞受賞作だというので手にしてみた。
構成は確かに横溝正史の香りがします。
幼少期の悲しい体験が胸を突きます。
裂けた瞳 高田 侑 新人だそうです。おまけに著者は桐生市在住の経理マン。文句なく面白い作品です。
ホラー大賞受賞作。
永遠の仔 天童 荒太 孤独な少年期に養父、養母が作ってくれたお弁当が本当に嬉しかったと後日告白するシーンが泣けます。確か映画化かドラマ化がなされたと思う。見てないが。
     
     

 

戻る